教育

コミュニケーション

 CHA文化のCはCommunicationコミュニケーションです。茶の湯では、お茶席のすみずみまで亭主が客へのおもてなしの気遣いをします。客は亭主の心遣いを感じながら、その心遣いにことばで応えていきます。この亭主と客との間のこのような気遣いの心のコミュニケーションは、お茶を点て、お茶をいただき、お茶席のしつらえやお茶や道具について会話をする中で表現されていきます。言い換えるなら、茶の湯とは、お茶を飲み味わうという所作を通じて、心とことばのコミュニケーションが作り上げられる場という側面が重要な1つの要素になっていると言えます。この要素がCHA文化ではCとして表わされています。

 現代では、コミュニケーションがうまくとれない若者たちの増加が社会問題として取り挙げられています。コミュニケーションをとるためには、自分自身との関わり、他者との関わり、集団や社会との関わり、あるいは自然や崇高なものとの関わりなど、自分自身も含め対峙するモノとの関わりについて、自分自身で意識していくことが大切です。意識することで、他者(あるいは自己、モノ)とどのようにして向き合っていくのか、どんな気持ちで向き合えばよいのかに、気づくことができます。

 指導要領の道徳に挙げられている以下の項目は、道徳性を養うという目標が具体的に表わされたものです。自分のことを知る、他者との関わりで礼儀正しく、真心をもって、相手を思いやり、新設に、理解し、信頼し、助け合い、尊敬と感謝の気持ちをもち、自然や崇高なものへの畏敬の念をもち、協力し合うこと。そして、集団や社会との関わりでは、郷土や日本の文化と伝統に親しみ、大切にすることで、自国を愛し、他国の理解にもつなげていくことを獲得目標とされています。

 ここで挙げられている道徳性を養うために必要な要素は、まさに茶の湯の中で繰り広げられているコミュニケーションにとって大切な要素と、ほとんど同じであることが分ります。換言するなら、茶の湯でいうコミュニケーション力を挙げていくことができれば、指導要領で掲げられている道徳心を養うことができることになります。それは、茶の湯が大切にする相手を思いやるもてなしの心を最重視したコミュニケーションだからこそ言えるのです。茶の湯の体験学習を通して、また茶の湯の心を学ぶことを通して、心が通じるコミュニケーション力をつけ、豊かなコミュニケーションができる子どもたちに育っていってほしいと思います。日本の伝統文化としての茶の湯は、優れたコミュニケーション育成機能を備えた完成されたシステムといってもよいでしょう。

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