教育

もてなしの心 気遣いの心 思いやりの心

 CHA文化の中心には、Hospitalityで示すとおり「おもてなしの心」があります。それは、相手に対する「気遣いの心」や「思いやりの心」として現われてきます。

 茶道には、利休七則、和敬清寂、一期一会といった、茶会の席で人をおもてなしする際の心構えを説くキーとなることばがあります。それらはすべて、いかにしてその場、その時間、そこに会するひとたちを、最高の舞台として演出するために、あらゆることに心遣いをするその大事な要素が一つ一つ簡潔な言葉で表現されています。その結果、最高の舞台となった茶席では、亭主と客とがさらに相手を気遣いながら、思いやりの心を持って、演出していきます。そこから紡ぎ出されるのは、思いやり合った相手との心の通じた関係です。CHA文化は「茶の湯のもつ人間関係形成力の側面に注目」していますが、まさにこの先人の英知とその後綿々と引き継がれてきた日本人の心が、ここに凝縮されていると言えます。

 茶道を良く知らない人にとって、茶道とは一定のお作法でお茶を点てそれを一定のお作法で飲むもの、と考えがちですが、利休七則、和敬清寂、一期一会ことばにみられるように、人と人とが生きていく社会の中でどのような生き方をして、どのような関係をつくっていけばよいのか、自然も含め、生きる目的や考え方など、幅広い知識や感性が必要とされるとても奥深い、日本の生活文化としても発展してきた総合芸術といえます。

 その中で、今をどう生きるか、について、茶の湯の心から学ぶことが多いと思います。CHA文化は、まさにその視点によって茶の湯の現代的捉え直しをしたものです。現代社会は、人が人を大切にする時代ではなくなったのではないかと思われる事件が相次いでいます。茶の湯が教えている心は、とかく人間関係が希薄、崩壊になりがちな現代にあって、家庭においても、学校、職場、社会において、あらためて、人が人を大切にする心を現代に蘇らせてくれます。人が人を大切にする。その時、その場、そこに会した人たちが二度とない機会として一瞬一瞬を大切にする。人を敬い、思いやる。現代だからこそ誰しもが気づきたい「日本の心」が、そして、グローバル社会の中に生きざるを得ない日本の将来を担う子どもたちに是非とも伝えたい「日本人の心」が、「茶の湯の心」にあるのではないだろうか。

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