教育

あいさつ

 茶の湯は、あいさつに始まりあいさつに終わります。あいさつは、コミュニケーションの最初の一歩であり、最後の締めとなります。 親しい人とのあいさつ、初対面の人とのあいさつ、たまたま隣り合った人とのちょっとしたあいさつなど、あいさつにもいろいろあります。いずれの場合も、あいさつをすることで、その場が少しうちとけた、なごんだ空気が流れるのを私たちは日常的に体験して知っています。しかし、「あいさつをする」という単純な動作によって、「その場の好ましい空気をつくり出す」というすばらしい効用があるにもかかわらず、私たちはあいさつを軽視しがちです。特に、人間関係が希薄になっている現代社会では、ますます、その傾向が強まっているように見えます。

 茶の湯体験学習を行った子どもたちのその後の変化を聞いてみると、「あいさつ」を挙げる子どもたちが非常に多いことが分ります。茶の湯体験学習は、子どもたちにとって「あいさつ」することが印象深く残っているということです。家に帰ったとき、家族にあいさつするようになった。あるいは、何か始めるときあいさつをするなど、日常生活の中で、あいさつを進んでするようになっていることが、先生方からの報告にも多くみられます。茶の湯を学ぶ中で、あいさつの大切さを知識ではなく、体験としてやっていくことが、何よりも子どもたちに対して大きな刺激となっていることが分ります。それが、日本の伝統文化である茶の湯の中で大切にされているということを知れば、なおさら意味が深く伝わっているということなのかもしれません。

 いずれにしても、あいさつが心のつながりをもたらす、最も簡単な方法であり、有効な方法であることを伝えるのに、茶の湯や茶の湯の心は、教材として優れていることがわかります。しかも、世界に通用する、世界に誇れる伝統文化であることを知ることで、子どもたちに日本人としての誇りと自信をつけることができるでしょう。

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